2006年02月13日

ジェニファー8



[出演]
主演;アンディ・ガルシア、ユマ・サーマン
助演;ジョン・マルコヴィッチ、ランス・ヘンリクセン

[あらすじ]
アメリカの田舎町で、連続猟奇殺人事件が起きた。LAから出向してきた刑事ジョー・ベルリン(ガルシア)は、唯一の目撃者である女性(ユマ・サーマン)から証言を取ろうとする。ところが彼女は全盲であり、犯人と言葉を交わしているのにその姿を知らない……。

[感想]
非常に正統派のサスペンス。盛り上げ方も周到で、特にユマ・サ−マンが全盲であるということを上手ーく利用して緊迫感を呷ってくるのは、かなりドキドキする。それから、ジョン・マルコビッチがベルリンを延々と尋問し続けるシーンもあるのだが、これがまた怖い。
そして、ラストはあれこれ予想していたにも関わらず、完全に意表を突かれた。伏線不足という印象もあるが(苦笑)、それは仕方がないかもしれない。
……何故かというと、実は、映画の完成後に制作会社が強引にフィルムを20分カットさせたらしいのだ。その所為で、ラストはかなり唐突になっている。
あー、完全な状態が見れたらどんなに良かったことか! 

この映画を撮った1992年より後に、ロビンソン監督は監督業から離れてしまう。The Rum Diaryの脚本・監督を引き受けるまでの13年間の活動停止である。
どうやら上映時間のカットの他にも、プロデューサーと製作会社のいざこざなどがあって、全く思うように撮れなかったらしい。それもあって、映画界にこりごりしてしまったんだとか……。
ロビンソンによれば、この映画の最大の問題点は、主演がアンディ・ガルシアであることだ。彼がイメージしていたのは、アル・パチーノ。つまり、くたびれたおっさんである。
目が見えていたら絶対に付き合わないようなさえない中年男性と、全盲の美しい女性とが恋をするというのが、この物語のミソである。アンディ・ガルシアとユマ・サーマンじゃ美男美女の恋愛になってしまうというのが、監督は相当悔しかったらしい。
その分、物語の皮肉さ・切なさが多少薄まっているのは確かだ。ガルシアは頑張って「冴えない」人物を演じているんだけどね。

そうした多くの問題点を抱えつつも、非常に美しい映画である。画面ではいつも雨か雪が降っているのに、作品のイメージは乾いていてシニカルなのだ。希望とか正義というものが最初っから擦り切れてないような、そんな空気が漂っている。
ジョン・ベルリンが神の存在について吐く台詞がある。「人間の祈りを神は聞いているのか? いいや、聞いちゃいない。何故ならば……」
このベルリンの台詞の滑稽と悲観の混じり具合が、映画全体を象徴しているようだった。ハードボイルドに美学があった時代の、美しさと切なさを残した映画だと思う。




続きを読む(ちょっとだけネタバレ)
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2006年02月10日

Bruce Robinson監督作品リスト

『ウィズネイルと僕』 
Withnail & I (1987)

[出演]
リチャード・E・グラント(Withnail)
ポール・マッガン(I)
ラルフ・ブラウン(Danny)

[入手方法]
記念すべき初監督作品。
吉祥寺のバウハウスシアターで公開されたきり、日本ではビデオ化・DVD化されないまま現在にいたる。
観たい方は海外注文するしかないが、アメリカのCriterionコレクションから発売されている英語字幕付バージョンは、実はリージョンフリーなのでお勧め。


『広告業界で成功する方法』 
How to Get Ahead in Advertising (1989)

[出演]
リチャード・E・グラント(Bagley)
レイチェル・ワード(Julia)

[入手方法]
監督第2作。
日本ではVHSのみが辛うじて入手可能。大型レンタルショップに行けば、見つかるかもしれない。
最近は、若き日のショーン・ビーンが冒頭のシーンに20秒くらい出演していることで、一部では有名になったようだ(笑)。その過程において、このビデオが方々のレンタルショップで見出されたと思われる。


『ジェニファー8』
Jennifer Eight (1992)

[出演]
アンディ・ガルシア(John Berlin)
ユマ・サーマン(Helena Robertson)
ジョン・マルコヴィッチ(Agent St. Anne)

[入手方法]
監督第3作。
それなりに有名な俳優をキャスティングしているので、見つけるのは難しくない。ただし、VHSのみ。絶版なので、レンタルショップへどうぞ。


The Rum Diary (2006) (pre-production)

[出演]
ジョニー・デップ(Paul Kemp)

[入手方法]
主役がジョニー・デップであるからして、映画が完成しさえすれば劇場公開されると思われる。ブルース・ロビンソン作品を全国のスクリーンで観る機会は、これが(多分)最初で最後にちがいない。


※書き出してみたら、完成した映画は3作しかなかった……。
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2006年02月08日

映画の力


反戦映画として有名な『キリング・フィールド』の脚本を執筆したブルース・ロビンソンは、映画という媒体がそのメッセージ性を通じて世の中を変えることは全くない、と断言している。
これが、例えばハリウッドの娯楽大作ばかりを撮っている人間の台詞だとしたら、意外なことは何もない。しかし、あのブルース・ロビンソンの発言となれば、これは随分と重みが増してくるだろう。何しろ、『キリング・フィールド』の脚本家だ。この映画タイトルでちょっとネット検索をかけてみれば、「見ることに意義がある」「知ることに意義がある」という感想に溢れている。
ところが、ブルース・ロビンソンはこうした賞賛に対して完全に悲観的な立場を取っている。それどころか、ネット上の感想・意見とは全然違った見解を取っているのだ。
おかげで、例えば「アメリカ人記者シャンバーグとカンボジア人ブランの友情は偽善じゃないか」というような意見を目にするたびに、いやちょっと待ってそこはブルース・ロビンソン本人が言ってるんだけどね!と反論したくて堪らなくなる。
違うんだ、彼のインタビュー集を読むと、色々事情があったって分かるんだよー(笑)! 
というわけなので、ちょっと本腰を入れて『キリング・フィールド』制作の裏側について書いてみる。

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posted by heathertop at 14:59| Comment(2) | TrackBack(0) | Essay | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年02月07日

Paranoia in the Launderette


1998年、Bloomsbury社から刊行。
ブルース・ロビンソンの書いた小話です。手のひらサイズのポケットブックで、ページ数は44ページ。だから、500円ちょっとで買えるし、一気に読んで笑えます。ロビンソン入門としてはお手軽な一冊と言えましょう。
テレビ番組の脚本を書いているライターの「僕」が、コインランドリーで悲惨な目に合うという粗筋。あ、パラノイアなのは「僕」です。書いている脚本の影響で、凶悪犯罪者の影を見てしまうという…。おそらく、「僕」はブルース・ロビンソンの投影なんでしょうね。
とにかく悲惨で、アンラッキーの連続な「僕」。笑えます。「ウィズネイルと僕」のノリが好きだったら、こちらも楽しめるでしょう。
あと、短いので英語の勉強にはとてもお勧めです。ブルース・ロビンソンは、実はお手本みたいに整った文章を書く人なのです。だから英文法に慣れようと思ったら、この人の本を一冊読むと良いんじゃないでしょうか。
ただ、語彙は豊富すぎて難しいのが難点かもしれません。略語・口語の類が多いので、辞書で調べても判断つけられないことすらあります。(ロビンソンの頻出単語”Slash”がトイレに行くという意味だと、最近になってやっと気が付いた…)
が、そんなのは調べないで放っておけばいずれ見当がつきます(笑)。ディケンズの影響を批評家に指摘される巧みな散文で、笑いながら英語の勉強っちゅうのは如何でしょう〜?

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2006年02月01日

Bruce Robinson 著作リスト



(本人の著作)

1995,
Withnail and I. Bloomsbury
『ウィズネイルと僕』の脚本。

1998
Paranoia in the Launderette. Bloomsbury
短い笑い話が収録された薄い本らしい。とにかく笑えるというのがAmazonのレビュアー達からのコメント。

1998
The Peculiar Memories of Thomas Penman. Bloomsbury
小説処女作。ブルース・ロビンソンの幼年時代をモデルにしている。

2002
Die merkwuerdigen Erinnerungen des Thomas Penman. Goldmann, Mchn.
『トーマス・ペンマン』のドイツ語版。表紙がとっても素敵です。


(共著)
2002,
Bruce Robinson & Sophie Windham The Obvious Elephant. Bloomsbury
奥さんが挿絵を書いている絵本。

2005,
Bruce Robinson & Sophie Windham, Harold and the Duck.Bloomsbury
絵本第二弾。Haroldは自分の家で飼っている犬がモデルになっているらしい。

(その他)
2001,
Alistair Owen, Smoking in Bed: Conversations With Bruce Robinson. Bloomsbury.
ブルース・ロビンソンに対するインタビュー集。

2004,
Kevin Jackson, Withnail & I. (Bfi Modern Classics)British Film Inst.
映画『ウィズネイルと僕』に関する評論と制作時の状況などについての本。
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2006年01月30日

Mini biography

1946年5月1日生まれ。イギリスのケント州出身。

18歳で、ロンドンのCentral School of Speech and Dramaに入学。2年で卒業した後、すぐにフランコ・ゼフィレッリ監督の『ロミオとジュリエット』(1968)にキャスティングされて、ローマへ。が、そこでの経験から俳優になる意欲を失う。

その後、脚本家を目指して執筆活動を続けていたところ、プロデューサーのデイヴィッド・パットナムの目に留まる。幾つかの試行錯誤の末、『キリング・フィールド』(1984)がパットナムに採用され、映画化される。この初脚本作品で、ロビンソンはアカデミーの脚色賞にノミネートされる。(が、惜しくも逃す。ちなみにこの年の受賞作は『アマデウス』)

この成功を足がかりとして、自分自身の経験を小説化した『ウィズネイルと僕』(1987)を自分自身で映画化するチャンスを掴む。これが商業的には成功しなかったものの、カルトクラシックとして評判を取る。
ところが、その後の監督作品である『広告業界で成功する方法』(1989)『ジェニファー8』(1992)は、いずれも諸々の事情により思うような作品に仕上がらず、ロビンソンは監督業から身を引いてしまう。

映画業界から離れた隠遁生活の間に、ロビンソンは初めての小説を執筆する。この「The Peculiar Memories of Thomas Penman」が、批評家の間で高い評判を獲得。
本人も家にこもりきりの生活に飽きたらしく、1998年に『スティル・クレイジー』で約20年ぶりに俳優として復帰してみたりする。
その後はロンドンの切り裂きジャックを題材としたノンフィクションを執筆していたものの、出版前に再び監督業のオファーがやってくる。ジョニー・デップからのラブコールを受けて、ハンター・S・トンプソン原作『The Rum Diary』の脚本と監督を了承。
現在はPre-productionの段階にあるということなので、おそらくは脚本執筆の真っ最中と思われる。

ただし、アップダウンの激しいこれまでの人生航路を省みるに、これが『ジェニファー8』以来の14年ぶりの監督作になるかどうかは、いまだ未定。


家族構成は、奥さんのソフィー(絵本作家)、娘さんのリリー・インディラ(87年生)、息子さんのウィロビー君(94年生)の4人家族。現在はウェールズのヘリフォードシャーで暮らしている。
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2006年01月29日

About Smashing Typewriters


というわけで、新しくブログを始めました。

これは、イギリス人の映画監督にして脚本家、俳優、作家でもあるブルース・ロビンソンについて徹底的に情報を集めまくり、気が済むまで分析したり考察したり、きゃ〜きゃ〜とミーハーなことを叫んだりするページです。

ブログというものはタイトルが必要らしいので、とりあえず思いついたままにSmashing Typewritersとしてみました。
Smashing Pumpkinsをちょっと意識してますけど、由来は「Smoking in Bed」というブルース・ロビンソンに対するインタビュー集に出てくる一番好きなエピソードにあります。この本は、ペーパーバック丸々一冊分が質問と答えで構成されている本なんですが、どうやらこのインタビューはロビンソンご本人の書斎で数日間かけて行われたようなんです。
それで、何時間にもわたるQ&Aの後で、エディターのAlistair Owenによる最後の質問というのが、


Q:ところで、インタビューを始めた時から訊いてみたいと思っていた質問があるんですけど。あなたのIBM(タイプライター)のカバーには、どうして大きな穴が開いているんですか?

A:私が火かき棒で殴ったからだよ。意図していたようには、ならなかったんだけど。(言葉を)聞くことが出来ない時、書けない時というのは、ひどく苛立たしいものだ。それで、私はちょうど何かを握ったから、バシッとね……



というわけで、彼が執筆に用いるタイプライターには大きな穴が開いているんでした。それでも壊れずにまだ使えているという辺りが、パソコンと比べて丈夫ですね。
誰しもタイプライターを叩き壊したくなる瞬間はあると思うんですが、それにしたって壊さねーよ!という気もします(笑)。そんな共感とロビンソンに対する愛着の気持ちを込めて、このブログはSmashing Typewritersとしたわけです。
どうぞよろしく。


posted by heathertop at 16:32| Comment(2) | TrackBack(0) | Profile | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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