2006年03月11日

広告業界で成功する方法



[原題]
How to Get Ahead in Advertising

[監督・脚本]
ブルース・ロビンソン

[出演]
主演;リチャード・E・グラント
助演;レイチェル・ウォード、リチャード・ウィルソン、ジャクリーン・トン、ジョン・シュラプネル、ショーン・ビーン

[あらすじ]
ロンドンの広告代理店で働くバグリー(リチャード・E・グラント)は、おできに塗るクリームのキャッチコピーに苦しんでいた。苦しむうちに、自分の肩に出来たおできが気になり始める。だんだんと膨らんでいったそれは、やがて口をききだすのだが、おできの声を聞いているのは、いつもタイミングが悪くて自分だけ。妻(レイチェル・ウォード)もその存在を信じてくれない。だんだんと擬人化していくおできは自分の妄想なのか、それとも……。

[感想]
実はブルース・ロビンソンも少しだけ登場しているこの作品。(「おでき」&「幸せの青い小鳥さん/牡」の声)
粗筋を書いてみても訳の分からない話ですが、実際に観てみてもよく分からなかった。こういうユニークでシニカルな話は、むしろ小説にした方が納得できたかもしれない。
あるいは、物語の荒唐無稽さが映像のちゃっちさによって強調されているので、きちんと撮影できていれば、評価は全く違うものになっただろうか。
何しろ、制作会社の都合により、撮影開始一週間前に、いきなり予算が100万ポンド減らされたらしいのだ。総予算が380万から280万に減らされれば、その分だけ撮影期間が短縮される。CGや特殊効果もC級のスプラッタムービーなみの出来なので、ロビンソン監督の悔しさはいかばかりかと思われる。

それでも、脚本は素晴らしかった。単語と単語を組み合わせるだけで、こんなにも美しいセンテンスが生まれるのか…と、感銘すら受ける。そして、ラストシーンは映画ならではのスペクタキュラーだ。ホルストのジュピターに合わせ、REGが朗々と台詞を口にしながらイギリスの美しい田園風景を駆けていく様は、それだけでも観た甲斐があったというものだ。
(……ただし、日本語字幕には長さ制限があるせいで、原文の美しさが損なわれてるような気がした。ほんとは、DVDで英語字幕を付けて観たい。ブルース・ロビンソンの書く文章は、短くまとめてしまったら意味がないような、絶妙の美しさがある。日本の字幕は元脚本より思い切り短く縮めたものなのだという事実を知ったら、監督は悲憤慷慨しそうだ/笑)

また、英国における時代背景を考慮に入れないと、この作品の意味合いは薄れてしまうような気がする。
つまり、80年代のサッチャー政権末期に作られた、かなり政治批判の度合いの色濃い作品なのだ。経済優先でさまざまなクオリティ・オブ・ライフが切り捨てられていった状況に対する危機感を、コメディという形で笑い飛ばそうとしたのだろう。
同じ主張が込められたイギリス映画『ブラス!』は、もうちょっと分かりやすく明確なので、当時のクリエイター達の主張を知るためにはお勧め。(そうでなくても、映画として面白いのだが。「ユージュアルサスペクツ」のコバヤシさんことピート・ポスルスウェイトも登場するし)
物語の最後まで辿り着いてみると、前半の荒唐無稽さ、後半の不気味さが、物悲しくて皮肉な社会批判に結びついていることがようやく分かって、じわじわと感慨が沸き起こってくる。そういう意味で、最後まで観て面白さが分かる作品なのかもしれない。


ちなみにこの作品、一部のショーン・ビーン氏ファンの間で、数年前に瞬間最大風速的に有名になった(笑)。冒頭に10秒くらい登場する若かりし頃の彼は、えらく美しいのだ〜。
かくいう私も、5年ほど前にキャプチャーを送ってもらって写真だけ眺めた記憶がある。当時はまさか、ブルース・ロビンソンに嵌るとは予想だにしていなかったのだが。いやはや。
posted by heathertop at 01:14| Comment(2) | TrackBack(0) | Review | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
heathertopさん、こんばんは。

このビデオ(字幕版)を先日運良く入手して鑑賞しました。声でBruce様が出ているとはさっぱり気付かず(後で確認、確認・笑)…私が好きなのは、おできの顔を見つけてのけぞるあのスローモーション・シーンです。色とりどりの品物が散らばって落ちていく様子に見入ってしまいます。

字幕は限られた字数で最低限の意味を伝える為の手段ですから、元の台詞と比較するとどうしても…。英語字幕でも、全部が書かれているとは限らないですよね。

日本でDVD化してくれれば一番ですが、その前に多分海外通販だろうなぁ…(苦笑)?!
Posted by still crazy for STILL CRAZY at 2006年03月11日 20:57
こんにちわ!

そうなんですよ、監督はおでき&小鳥さんの一人二役(笑)だと聞きました。監督はよく文章を書く時に声が聞こえると言ってますし、実際に喋っている時も、他人の台詞を口にする時は訛りや声色まで使い分けてますからねえ。きっと、こだわりがあるんでしょう…。

私もスローモーションのシーンは好きです。バスソルトみたいなのが散らばるのが綺麗ですよね。
監督の映画には、それぞれの作品ごとに印象的なシーンがあって、彼の才能は脚本だけじゃないんだなあ…と思ったりします。

でもまあ、言葉がすごく大切にされているのは確かなんですけれども。字数制限があるのは分かってるんですが、例えばDVDを発売する時に、通常字幕バージョン・完全翻訳バージョンの両方を付けてくれたら良いんじゃないかなあ……と思ったりします。
まあ、日本版DVDの発売自体が、叶いそうにない夢ですけどね(苦笑)!
Posted by heathertop at 2006年03月12日 22:14
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